LC-A+ -黄金長方形のはなまるpippiはよいこだけ-

執筆者:青狐

 黄金長方形・・・黄金長方形から最大の正方形を除く。残った長方形は元の黄金長方形と相似になる。これを繰り返すと、無数の相似な図形が出来ていく。

 正方形の列において角の点を滑らかにつないでいくと、渦巻が出来ていく。この螺旋は、巻貝の貝殻に現れている渦巻きと同種の対数螺旋である。そしてこの黄金長方形は自然界に存在する。自然にあるもののほとんどあらゆるものは黄金比である。葉っぱの縦横の比率、遠巻きに見た時の樹木の縦横比率。ミロのヴィーナス。人が無意識に、「美(Aesthetic)」を感じる形。1:1.618

 実は、この黄金長方形にものすごく近似値のトイカメラがある。それがこの、LC-Aモデルである。後述するが、大きさは縦65mm、横105mm。正面から見た比率としては、1:1.1615。ほぼほぼ黄金長方形といえるのではなかろうか。

 読者の紳士淑女の皆様は、カメラそのものが「美」しいことをすでに感じていらっしゃることと思う。今回は、その黄金長方形の導く回転の渦に飲み込まれてほしい。そして出てくるときには、ルール、慣習、常識、あらゆるものから自由になっていてほしい。

LC-A+

 今日は、またLomographyの製品の紹介である。え、「また」?ここ を読んでみればわかる。筆者は、フィルムカメラ沼浅瀬の住人を自負している。今回はコシナのCX-1/2の模倣とされるモデル、LC-Aシリーズのうち、LC-A+を紹介したい。

 このカメラは、公式にも同モデルにインスピレーションを受けた、という記述がある(公式ページ)。今からおよそ39年前、そこまで日本の一カメラに入れ込んだ技術者がいたとは…。そのおかげで現在のロモグラフィーがあるわけだが。

さてさて恒例のスペックをば。いつも通り公式(https://shop.lomography.com/jp/cameras/lomo-lc-a-family/lomo-lc-a)から抜粋をする。

LC-A+ スペック

ケーブルレリーズソケット あり

バッテリー型 3x AG13 / LR44 / 357 / SR44

絞り automatic f2.8 to f16

シャッタースピード Automatic – ∞ to 1/500

焦点距離 32mm

露光範囲 36x24mm

フィルム巻き上げ ワインダー

フィルム 35 mm

フラッシュ接続 ホットシュー

焦点 ゾーンフォーカス

焦点距離 0.8m – 無限

フィルムカウンター 自動

素材 プラスチック

三脚穴 あり

露出計 あり

ファインダー Direct optical viewfinder

 なんとトイカメラの位置付けなのに、プログラムオートに加え、ゾーンフォーカスがついているではないか。しかもビネット(要するに四隅がケラれる写り方)もあり、おまけに黄金比のボディ!更にこの令和の時代に新品が買える。バッテリーもなんとなく大きさがあってればそれでよさそう。それでいて3万円でお釣りがくるというのだから、もういたれりつくせりぽぽんちゅうちゅうというやつだ。

 まだ沼の付近にいる諸兄諸姉のために説明をすると、プログラムオートとは、レンズを通じて露出を勝手に決めてくれる機能のことである。ゾーンフォーカスとはあらかじめ定められた距離にピントを合わせておく、所謂置きピンのようなもの。ビネットは上述の通りで、いたれりつくせりぽぽんちゅうちゅうはおしてもひいてもよいこだけである(筆者はカラ松と一松推し)。

 定量的なものはさておき、いったん実物を見てみよう。

物欲をそそるパッケージ
実物+速写ケース
木箱

 Lomographyの製品は、こうした特別感の演出が非常に素晴らしい。自分だけの宝箱というか、普段の生活ではおよそ木箱は見ない(はずだ)。中身も、後述する10ゴールデンルールや作例、レリーズケーブルなんかが同封されており、それだけでなんかものすごくお得感がある。余談ではあるが、筆者は木箱の存在をクラッシュバンディクーという名作ゲームで知った。それまでの認識としては、木箱はスピンアタックないしジャンプで踏み潰すものだった。コース内の木箱をすべて壊すことによってダイヤモンドが手に入るんだったなァ…と、こうした細やかな気遣いが我々をノスタルジックな気分にも浸してくれる。

…ん?

 誰だお前!?

 彼は通称「ロモ蔵」というらしい…。ロモ「ぞう」なのかロモ「くら」なのか。ま、恐らく前者の読み方なのだろう。公式じゃないし自由でしょ(適当)。

カメラの底。実はやることが多い

 まず、上部突起部のレバーは、シャッターとファインダーを開けるレバー。ここが開いてないとシャッターすら切れない。まぁ電源ボタンのようなものとして思っていればいいと思う。三脚穴の上にあるレバーは、みんな大好き多重露光(MX)機能のレバー。一度シャッターを切った後、このレバーを動かす事でフィルムを送らず再度シャッターが切れるらしい。

背面。左からフィルム装填有無が確認できる
右手でシャッター、フィルム送りができる

 この機体はフィルムISO感度100から1600まで対応している。そもそも今1600売っているのかはさておき、今流通しているフィルムのほとんどが対応可能だ。そしてシャッターを切り、コマ送りするときに黄金長方形の回転でもってジャリジャリ巻いてほしい。コマ送りするときが一番楽しい。次の世界を切り取る準備をしているのだ。

ゾーンフォーカス

 この小さなレバーで、80cm、1.5m、3m、無限遠とピントを変更させる。結構精度が良くて、距離を見誤るとぼんやりした世界に切り取られるが、それもまた表現。

 ここまで述べた通り、それなりに機能の詰まったボディである。筆者の大好きな多重露光機能まで公式についているのだから、筆者的にはもう文句のつけどころがない。ボディだけではない。このLC-A+、レリーズケーブルやフラッシュ、さらには公式で防水カバーまで用意されている、実は潜ったらめちゃくちゃ深い沼なのである。

 肝心の写りはというと、後の作例を見てほしい。実に面白い写り方をする。前にも述べたが、まさしくトイカメラは自由なのである。

LC-A+との出会い

 筆者がLubitel166+を手に入れてからというもの、筆者はロモグラフィーの公式HPを移動中に見ることが増えた。文章も恐らく英語から日本語に倒した独特な表現、紹介されているテクニック…。筆者が沼に頭から入る要素しかなかった。フィルムってこんなに楽しいんだ…やっぱそうだよな…と陶酔している中、ふと頭の中に一つの考えが浮かぶ。――ロモグラフィーの35mmってあるのかな――。答えはすぐに見つかった。LC-A+である。どうやら元々うんぬんかんぬん、という歴史的な部分から入る。ふむふむなるほど…もともとはコシナの…。作例を見る。サイケデリックで、およそそれまで知っているセオリーなんか何も充足していない。なんて自由なんだ…。すでにトイカメラ沼の住人だった筆者はすぐに興味を持った。そこからが早かった。気が付いたら手に木箱をもって、ゆっくり箱を開けていたのだ。そしていつの間にかファーストロールが終わっていた。

 これを買う前に言っておくッ!筆者はかつてロモのHPをほんのちょっぴりだが体験した。い…いや…体験したというよりは、まったく理解を超えていたのだが………あ…ありのままかつて起こった事を話すぜ!「筆者はPCの前でクリックしたと思ったら、いつのまにか撮っていた」。な…何を言っているのかわからねーと思うが、筆者も何をされたのかわからなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ…もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。

 ポルナレフ状態である。

ロモの10 Golden Rules

筆者がロモグラフィーを心から応援したいな、と思ったのはこの理念があることを知ったからだ。筆者の思想信条である、カメラとは自由だ、にものすごく近しい。結局10個のルールといっても、そもそもルールなんか気にしなくて良い、とまで言い切っている。ともすれば突っ込みが入りそうな文言まであり、とても筆者好みの考え方だ。

引用:公式ページ

1.どこに行くにもLomoをつれていこう!

2.昼でも夜でもいつでも撮ろう!

3.Lomographyは人生のジャマじゃなく、人生の一部です。

4.オシリの位置からも写してみよう!

5.できるかぎり被写体に接近して撮ろう。

6.考えるな!

7.早く!速く!

8.フレームにどうおさまるかなんて、知ろうとしなくてOK!

9.何が写ったか、わかんなくてもOK!

10.ルールなんかないさ!!

 なんてパンクなんだ…。やはり(トイ)カメラは我々を自由にするのだ。

LC-A+の使用感と作例

 運用は超カンタン。撮影するには、被写体の距離をなんとなくでいいので目測し、ピント位置を決める。その後、レンズを開ける。半押しするとランプが光るが、正直あまり気にしなくてもいいと思う。そしてタイミングよくクリック。音もかわいらしく、パチリ、と慎ましくも元気な音が鳴る。気分が乗ってきたら、底部の多重露光レバーをスライドし、もう一度パチリ。気が済んだらフィルムを巻く。そして次の世界を切り取る準備をしよう。

 作例はこんな感じ。

LC-A+, Kodak Gold200, パンフォーカスっぽい
LC-A+, Kodak Ultramax400, 湿度も写せている…のか?
LC-A+, Kodak Ultramax400, ビニール傘越しのビル

 所謂風景写真はこんな感じ。Minitar-1独特の写りが出ているのだろうか。ビネットもあり、本当に個性派カメラという感じ。

 続いては、多重露光の写真だ。

LC-A+, Kodak Ultramax400, ロモグラフィーの公式ショップ前
LC-A+, Kodak Ultramax400, 銀座線のどこかの駅のホームのモニュメント
LC-A+, Kodak Ultramax400, 日暮里駅
LC-A+, Kodak Gold200, 浜松町ビル街
LC-A+, Kodak Gold200, 浜松町の自然と人工物
LC-A+, Kodak Gold200, ガード下の暗いところでもへっちゃら

 続いて、ピンボケ写真も紹介する。

LC-A+, Kodak Ultramax400, 本当は無限遠で撮りたかった
LC-A+, Kodak Gold200, これもホントは無限遠で…

入手例

 上述の通り、今でも公式HPから購入できる。ハイパーイージー。でも、細かいガワの違いでプレミア価格が出ているものもあるらしいので、筆者より沼の位置が深い諸兄諸姉は、是非とも入手に挑戦してみてほしい。名前の通り(AOCo!)、P社を愛する筆者としては、是非いつか公式で金メッキに蛇革でキメてほしい。

おわりに

 今回も、公式のほうが圧倒的に文章も上手だし、情報量・質も上等なので、一ユーザー目線で使用した時の魅力を伝えようと思った。どうにかして伝わってくれれば幸いである。くどいようだが、筆者としては、沼ダイバー候補の皆様に対し、自分の感じたことを素直に伝えてみたいだけなのだ。

 恒例のタイトル回収であるが、例の6つ子のニートは決して褒められた生活をしていない。だからこそ、はなまる(=花丸、転じて上出来なこと・人を表す)ぴっぴ(=彼ぴっぴ、とか人を示す?)はよいこ(=良い子)だけ、というタイトルなのだろう。しかし一生全力モラトリアム、という歌詞にもある通り、モラトリアム=一時停止、すなわち人生のフリータイムをひたすら謳歌するんだぜ、という力強いメッセージを包含している。

 同様に、写真撮影という非日常とは、人生におけるあらゆる義務からの一時停止=モラトリアムの時間であり、無敵で、自由な時間だ。その空白の時間くらい、自分だけの強い色を出してみようじゃあないか。そのとき横にいるのは、今回紹介したLC-A+だと筆者は思う。ぜひとも手にして、自分の色を思い切りぶちまけてみよう。世界が変わるはずだ。

 トイカメラは、あなたを自由にする。

 どうかよいカメラライフでありますように。

この沼に住む人
青狐

レンズ沼、カメラ沼に誘い込む狐。フィルムで多重露光大好き。ピンボケ、露出オーバー・アンダーなんでもござれ。

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カメヌマ

コメント

  1. […] ボン玉のように、いかにして最小の表面張力で空気を囲むか、とか、食物連鎖とか。あとは前々回で紹介した黄金比、あるいはフィボナッチ数列なんかも、実は自然界で生物が合理的に成 […]

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