シャボン玉で遊ぶ子供は多いと思う。でもなぜいつも丸い球形なのだろう。四角とか多角形、あるいは円柱とか円錐とかでもいいのに…。子供ながらにそんなことを考えた筆者はある日先生に聞いてみた。
先生は言った。答えは若干難しいが、最も表面張力が小さい立体を形作るためである、と。要するに、体積が等しい立体の中で、一番表面積が小さいのが球である、ということだ、と補足してくれた。
自然は合理性の塊である。シャボン玉のように、いかにして最小の表面張力で空気を囲むか、とか、食物連鎖とか。あとは前々回で紹介した黄金比、あるいはフィボナッチ数列なんかも、実は自然界で生物が合理的に成長するのに必要な形・数だったりする。簡単に言えばこんな感じだろうか。
今回は、レンズの光源を丸に写す、M42マウントのレンズを2つ紹介したい。前回のように、同じようなスペックを持つレンズの比較が筆者は好きで、よく役割として重複しているがきっと個性はあるはずだという気持ちをもって、撮り比べをしている。
今回の共通項は4つ。①旧東独圏のレンズであること。②50mm f1.8であること。③玉ボケを生み出せること。④比較的安価で調達できること。今回も相変わらずオールドレンズの世界に入るかどうか迷っている紳士淑女の皆様のために、少しでも拙文であるが役に立てば幸いである。


機材紹介①:Pancolar 50mm F1.8
対応マウント M42マウント
フォーカス MF
レンズ構成 5群6枚
絞り羽根枚数 6枚
最短撮影距離 35.0cm
開放F値 F1.8~22.0
最大径×長さ 58 x 60mm
フィルター径 49mm
筆者の購入経緯について。先日紹介したIndustar 61 L/Zに味を占めた筆者は、オールドレンズの世界にどっぷり浸かろうと決心した。そこで、星ボケは持っているから、なにか特徴的な要素があるもので、かつKマウントでもアダプター介せばいけるやつがいいな…と考えて、有名なHeliosと、後述するOrestonも同時に購入した、というわけだ。
機材紹介②:Oreston 50mm F1.8
対応マウント M42マウント
フォーカス MF
レンズ構成 4群6枚
絞り羽根枚数 6枚
最短撮影距離 33.0cm
開放F値 F1.8~22.0
最大径×長さ 52 x 48mm
フィルター径 49mm
スペックだけで言えば、ほぼ変わらない。強いて言えば、レンズ構成に1群差があるくらい。正直、素人(ルビテル)の私には違いがわからない。だからこそ、素人の筆者の目線は、そのまま皆様が使ってもほぼ近しい見方なのだろうと思う。
玉ボケの出し方
出し方は以下の通り。
①光源にピントを合わせない
②開放(f1.8)で撮る
大きさの調整も簡単で、焦点位置をできるだけ近接にすること。ここは前回の星ボケと同じ。
使用感と作例
使用感については、すごくコンパクトな割にうまく使えば狙った写真が出てくる印象。いずれもピントリング、絞り環はものすごくスムーズに回る。実際に一眼レフに着用したフォルムも、前回のロシアンレンズのように前に細長い感じはなく、きれいにまとまっている。
作例:Pancolar 50mm F1.8




続いてOreston
作例:Oreston 50mm F1.8



ぶっちゃけシチュエーション違うんだから比較対象にならないだろ、という批判はその通りなのでスルーするが、ほぼほぼ2つともやりたいことができている。強いて言えば、Pancolarの方については収差が目立たない気がする。Orestonは若干レモンボケ(楕円形のボケのこと。沼人はなんでも独自性を出したがる。)が出ているので、絞りを気持ち小さくして撮れば、Heliosのような運用も可能、ということになる。多分。
両方ともピント部もシャープだし、色もよく発色している。素人なので詳しいことはわからないが、Pancolarの発色の方が素直だと筆者は感じる。
入手例
いずれも中古市場で多く、それも安価に見つけられるので難易度は低いと思う。コスト相応のアウトプットだと思うので、それこそオールドレンズの入門機といっても差し支えないと思う。中古市場に多く出回っているということは、それだけ人気だということだし、万一のことがあっても簡単にリペアが効くというのは大きいアドバンテージだろう。
おわりに
いかがだっただろうか。拙い作例で申し訳ないが、おおよそ似通ったスペックのレンズは、おおよそ似通ったアウトプットが出てくることが分かったと思う。
ちなみに筆者が常用するのはPancolar。理由は、あまり触れてなかったけど、MC、すなわちマルチコーティング化されているので若干光学性能が高い気がするためである。Pancolarも実はモデル違いでものすごく沼が深く、光学性能が違うらしいが、真偽のほどは定かではない。ポートレート撮影で使うと、気持ちのいい発色をしてくれる。ただOrestonも2cmではあるがより寄れるので、例えば室内で料理なんかを撮るとき等の場面で活躍してくれている。いずれのモデルに対しても、筆者は、敬意を払いたい。
じゃあ結局2つも買う理由なかったやんけ、と思う諸兄諸姉の皆様がおられることと思う。これを丁寧に否定させていただくとするなら、筆者は純粋な好奇心を満たすことができたのだ。「わからないこと」がわかった、もしくは「わからないということ」がわかった。これが学問、ビジネス、ひいては人生においても非常に重要なことだと筆者は考える。詰まる所、筆者にとって一番の近道は遠回りだったのだ。遠回りこそが最短の道だったのだ。
本当に廻り道だった
本当に本当になんて遠い廻り道………
カメラはこのために……「沼(LESSON5)」はこのために…
ありがとう……ありがとうカメラ
本当に………本当に……
「ありがとう」…それしか言う言葉が見つからない…
レンズは、あなたを深みへ誘う。
どうかよいカメラライフでありますように。
「めくるめく古の鏡筒たち」シリーズは他にもありますので、こちらもぜひ合わせてご覧くださいませ。
コメント
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