——沼人と相乗りする勇気はあるかな?
はじめに
ハーフカメラ。文字通り半分のカメラ、ということだが、そもそも何の話をしているのか。これは、ものすごく簡略化して言えば、「本来1枚の面積に2枚分の写真が入れられるカメラ」であり、つまり、「36枚撮りフィルムならば72枚程度撮影可能なカメラ」、である。
原理だけで言えば、レンズから入ってくる光をフィルムに当てることで撮影を行っているが、その当たる範囲が通常の35mmフィルム(ライカ判、とも)用カメラの半分、といったところだろうか。
字面だけ書くとなんと経済的な…!
ちょうどこの記事を書いている前日、富士フィルムがまたブローニーフィルムのブランド撤退を発表。まさにフィルム業界そのものの斜陽化が進行してしまっている最中なのだ。フィルムの原材料高騰だかなんだかわからないが、フィルムの販売価格や現像代金もドンドン値上げされているので、このご時世、非常にエコノミーなフィルムカメラと言える。
ハーフサイズのカメラは日本ではオリンパス、京セラ、キャノン等、今日でもその名を聞いたことがあるようなカメラメーカーもきちんと対応しているフォーマットだった。とくに、今回は有名なPENシリーズのうち、最終機であるPEN-EFを紹介したい。
機材紹介

形式 ハーフサイズカメラ
シャッター 1/30秒、1/250秒(プログラムシャッター)
レンズ D.Zuiko 28mm F3.5(3群4枚。テッサー?)
ピント合わせ 固定焦点(おそらく1m程度?接近は弱い気がする。)
露出計 外光式 セレン受光素子
露出 プログラム露出のみ
ファインダー ブライトフレーム(通称赤ベロ)付きビューファインダー
裏蓋 蝶番開閉式
重さ 約280g(除く電池)
電池 単3乾電池 x1(ストロボ用)
※ストロボ不使用時は電池不要
発売年 1981年
当初売り出し価格 24,800円(ケース付き)
筆者の購入経緯について。オールドレンズをそれなりに買い進めたある日。フィルムカメラを本格的に好きになろうとしていた矢先、フィルム現像代がバカにならないな…デジタルに戻ろうかしら…と考えていた。しかしあの独特の雰囲気、写りは得難いものだ…というわけで、インターネットの海を泳いでみた。すると、フィルムの撮影可能枚数倍化できるモノがあると。ふむふむなるほど…ハーフカメラねぇ…PENシリーズ、と…。正直、P社信者である筆者としては、他社のカメラを使うわけには…という葛藤は一瞬あったけど金(実弾)の魔力の前には儚く消え去った。てか名前も似てるしヘーキヘーキ、と安穏に捉えていた。




使用感は後から述べるとして、とにかく見た目が愛らしい。クラシックというには新しめで、新しいというにはやや古いプラスチックのボディ。手のひらくらいの大きさで、ポケットにもすっぽり入る大きさで、スナップを撮るにはうってつけの一台だ。
この可愛い81年製のボディにはプログラムオートが入っている。何も考えず、感覚で撮るのが好きな筆者は若干この機能がありがた迷惑なものとなっている。このカメラは、レンズ周りについている(これもややもすればSAN値が減りそうな見た目をしている。ヤーナム民でもある筆者にとっては啓蒙が上がりそうだァ…)セレン受光素子が露出計となっており、ここで光の量を図ってシャッタースピードを変られえる。そのおかげで、常に適正露出となってくれている。逆に言えば、露出アンダーになる際は通称赤ベロがファインダー下部からニュッと出てきて、シャッターが切れない。言うなれば、無茶な捜査をしようとしてフィリップに止められる翔太郎のようなもの。(分からなければ、是非Wを見てみよう。)
前置きが長くなったが、このモデルはいわゆるPENシリーズの最新作で、ストロボというには頼りないフラッシュ機構もついている。EEでもよかったのだが、やっぱり初めてはできるだけ新しいものがいいよね…ということで、EFの入手に拘ってみた。
2in1か1in1か

ハーフカメラは、上で述べた通り、(もうライカ判とかいう名称は回避し、以下普通のって書くけど気にしないでいただきたい)本来、普通の大きさのフィルム面に当たる光の半分の部分を露光しているので、写真の通りおおよそ半分くらいの位置に黒い部分がある。これが2in1たらしめているのだ。また、構図も所謂縦構図になっている。ではすべてのハーフカメラが縦構図か、と言えば別にそうではないが、本筋と脱線するので割愛。
考え方によっては、たしかにものすごくお得感が強い。ただし、物事には裏側の側面もある。

こちらの写真は、さっきの左半分をトリミングしているもの。何が言いたいかというと、同じ場面を切り取っても、普通の写真よりも画質は落ちる、ということだ。それもそのはず、本来1枚の写真の半分を切り取っているのだから、単純計算で画質は1/2?になるはずだ。ただ、これは筆者の独り言だが、筆者のようなルビテル野郎が画質がどうのこうの、というのはいかがなものかと思う。正直、使用しているPCはノーパソだしグラボなんざ入れてないので、そこまで大きく見え方に差がないと思う。そりゃプリントアウトして楽しむ方もいらっしゃるだろうが、むしろ粒状感がイイ!と思う人もいるのだから、むしろそういった楽しみ方をするのが精神衛生上楽なのではなかろうか。
使用感と作例
使用感については、本機の中のフィリップがものすごく優秀で、ハーフカメラということを忘れさせるくらい綺麗な写真が出てくる印象。操作も、せいぜいレンズ周りのISO感度を合わせるくらいで、あとはシャッターチャージをし、ファインダーを覗き、シャッターを切る、という実にシンプルな操作で事足りる。惜しむらくは多重露光ができないことか。まあ一度撮りきってもう一回ピッカーで出して…というのをやってもいいが…。
また、せっかくなので今回はシチュエーションごとの作例を、組写真風に紹介したい。
<晴れ・順光>


画面全体にピントが合う印象。パンフォーカスな写真となるようだが、やはり近接撮影や徒歩を超えるスピードで被写体に動かれるともうブレるようだ。
<室内>


いずれも角川ミュージアムでの展示を撮影したもの。最初はフラッシュを炊いた。光の当たり方が強かったのか、右側はやや白けてしまったがいい感じにシンメトリーに写ってくれたので演出と言い切りたい。後段は、たしかフラッシュを炊いた「ことにした」写真。正確に言えば、このカメラにとどまらず、コンパクトカメラのストロボって、チャージ時間が発生することもあり、本機もフラッシュ準備OKサインが出てこないと光らないようになっている。ただし、カメラ側で発光するゾ~と指示を出して、実際には光らせずに撮ることも可能。ただし、その場合はフラッシュする前提での処理となるため、当然ながら暗い写真になりがちだが、このような照明がいっぱいある室内のような場所だと、別にそこまで暗くならないようだ。くどいようだが、ISO200にしては頑張った方だと思う。
<日陰>

日陰から撮る場合、明るいところに露出が引っ張られて日陰部分が暗くなるケースがあるが、本機の場合だと、日陰側から露出を決めてくれるようで、暗い部分を明るく「適正に」写してくれたようだ。もっとも、空の色は真っ白になっていたが…。
<逆光>

逆光性能もそこまで悪くないと思う。比較のために撮った写真で、フレアも出ているけど思っていた以上には出てないなぁ…と思った。むろんこれ以外にも出るケースもあり個人的には少し安心した。一応申し上げておきたいが、筆者はヘンテコな写りをするレンズは大好物である。かびるんるんがいるやつとかボロッボロのレンズは当然除外させていただきたいが…。


これらはわりとしっかり反応してくれた写真。やっぱりこういうぼんやりした表現ができるのはフィルムの特権だと思う。
<夕焼け>

普通に撮ると赤ベロが出て本機の中の菅田将暉からダメ出しを食らうので、一応フラッシュを炊いた写真。ただし、そもそもフラッシュがそこまで強くないので対して周りのものに光が当たっていない。しかし、しっかり綺麗なグラデーションを出してくれた。
以上、本機の購入後、おそらくこういう場面で多く撮るんじゃなかろうかというケースをいくつかピックアップして拙い例と併せてご紹介させていただいた。ご参考になれば幸いである。
PEN EF入手例
中古市場で実はそんなに多く見かけない。希少性?に伴い安価に見つけるのは難易度高いと思う。また機体不良(ジャンク)も多い印象。実際、筆者の後輩はハーフカメラの入口として同機の動作確認済みと言われているものをチョイスし、某フリマアプリで購入したが、ISO感度変更リングの接触がスカスカで、結局入院費用と購入費用が同額程度になったケースもある。相場も、筆者が購入したころより高騰しており、程度の良いものだと3万近くするようだ。フラッシュ機能をオミットしてもよい、という方は、本機の前のシリーズであるPEN EEシリーズの購入の検討をしても良いだろう。
おわりに
今回は、今までの投稿を自分なりに反省し、少しシチュエーションごとに作例をご紹介してみた。今後の投稿では、おそらくここまで細かくはやれないと思うので、申し訳ないがそこまで期待しないで待っていていただきたい。
恥ずかしながら、筆者はまだ本機でもってモノクロフィルムで撮影をしていない。モノクロだと、本機のレンズと画質がベストマッチして、粒状感あふれるハードボイルドな作品になる可能性がある。残念ながら、筆者の腕はそこまでよくないので、言うなれば”ハーフ”ボイルドな作品になる可能性が高い。
一応、2in1についてもう少し触れておく。本機のファーストロールの出来上がりの写真が、たまたま現像をお願いしたカメラ屋さんだと2in1しかできなかったが、意外と面白かったのでそのままにしている。現在、筆者は、ハーフカメラで撮影した写真を、1場面ごとに切り取ってもらえるラボを近所に見つけたのでそこでお願いしている。もし2in1が気になる方は、一度相談してみても良いだろう。ただし、ラボによっては別料金がかかることもあるので注意。筆者は、通常の35mm現像と同じでOKなラボだったので、沼で泳ぐにはちょうど良い。
いずれにしても、本機はハーフカメラと言えどエクストリーム!な性能を持つカメラ。もちろん筆者の主観であって、全く逆の感想を持つ方もいらっしゃるだろうが、そこはもうNobody’s Perfectの精神で許してほしい。もしハーフの入口に本機を選んでいただけると、きっと新しい風をあなたの中に吹かせてくれるだろう。
カメラはあなたを自由にする。
どうかよいカメラライフでありますように。
コメント
[…] 前回は、ハーフカメラといえばというレベルで絶対上がってくるくらい有名なPENシリーズからの選抜だった。実際、PENシリーズに関するブログ、レビュー記事は星の数ほど見る。なぜか […]
[…] これは、筆者が日本へ帰国してしばらくのこと。徐々にオールドレンズとかハーフカメラとか買いあさっている頃、TVで風間俊介氏がディズニーに行っているのを見た。ワールドバザールから細かい設定を見て楽しんでいる彼の姿を見て、しばらく行っていなかったことを思い出す。そして火が付いた。 […]