めくるめく古の鏡筒たち その10(SMC Pentax 30mm F2.8 vs SMC Pentax-FA 31mm F1.8 AL Limited) -だいたいわかったLimitedレンズ-

執筆者:青狐

――通りすがりのペンタキシアンだ!

はじめに

今回はついに記念すべき第十回の「めくるめく」シリーズ、ということで、いままで頑なに避けてきたフシがある、FA Limitedシリーズの記事を書こうと思う。

これについては、前から十回目にはなにか思い入れのあるレンズで書きたいなあと思っていたのと、あとはなんとなく書くのが恐れ多かったのだ。

というのも、我々ペンタキシアン、というよりもっと一般的な表現として、ペンタックスに愛着のある我々にとってLimitedシリーズというのは、なんとなく、率直に言えば「終着点」というか、本当にこれ以上ないくらいの意味を持つレンズだと思う。だからこそ、これを書くのはなんとなく最終回というか、そういう感じの意味合いがあるのではないかと勝手に邪推していたのだ。

そんなわけで、その中のうちのひとつを紹介するなら、せっかくならヘンテコな焦点距離のものも併せて紹介してしまおう…あ、そうだ(唐突)1mmの差ってあるのかな(豹変)という狂気興味もついでに消化してしまおうと思い、寄稿に至った。

ということで、ペンタックスの誇るある意味最強の準標準レンズと、世にも不思議な焦点距離を持つニッチなレンズの比較をしてみようと思う。結果としては、レンズ越しに切り取った景色を見つめても真実とは心の目の中に写るものなのだ、ということがよく分かった。

機材紹介

SMC Pentax 30mm F2.8

コンパクトなボディ。
正面。
上から。
側面。F8だったらパンフォーカス。

まずはちょいとヘンテコだよ画角がアララカタブラツルリンコな30/2.8。先にネタバラシをすると、広角であれば28mmとかもあるのにという答えについてはこちら。どうやら、120mm÷4が答えとのことで、このレンズの発売当時のムービーカメラはズーム4倍が人気を博していたため、とのこと。

恒例のスペックをば。

対応マウント      Kマウント

フォーカス          MF

レンズ構成          7群7枚

絞り羽根枚数      5枚

最短撮影距離      30.0cm

開放F値             F2.8〜22

最大径×長さ      63x 39.5mm

フィルター径      52mm

重さ      215g

広角レンズは、意外と寄れる。このレンズも例外ではなく、最短30cmまで寄れる。普通に使う分にはオールラウンドに使えるので、初めての広角単焦点はこれでもいいかもしれない。また、あえてクセを挙げるならば、このレンズの絞り羽根が5枚であるという点だろうか。少し絞ると光源が五角形となる。

折角なので作例も少し。

サンシャインからの空。
わんぱ!
上(ry…ダネダネ!

このように、絞っても寄ってもコスパの良い(と思われる)画が撮れるので、意外とヘンテコといいつつ実はいいレンズなのでは?と思い始める今日この頃。

SMC Pentax-FA 31mm F1.8 AL Limited

割と大きい鏡筒と蓋。
組込み式のフード。取れない。
上から。
七宝焼きのフィンガーポイント(緑のポッチ)がイカス。

個人的には、Limitedシリーズでは一番好きなレンズ。筆者がこれを手に入れた学生時代、なぜかこれが一番高く、かつ当時のレンズカタログの中でもこれだけ別格な扱いで書かれていて、「なるほど、だいたいわかった」と通りすがりの彼のような気持ちになった。当時、実は最初に手に入れたLimitedは43mmだったが、もっともっと青春(アオハル)を頑張ってこれが欲しいな、と純粋に思うほど、ヌケのいい描写をしていたように記憶している。結局、家庭教師やテニスのコーチといったアルバイトをはじめ、諸々やって最終的に学生時代のうちにはPONと買ってしまえた。今でも一番大事なレンズは?と聞かれたらコレ、と答えてしまうかもしれない。…あ、でもこれすごい難しい問いだな…

当時使っていたのはたしかK-x、APS-C機、もっといえばエントリー機であったが、それでも十分違いを見るには十分だった。

対応マウント      Kマウント

フォーカス          AF

レンズ構成          7群9枚

絞り羽根枚数      9枚

最短撮影距離      30.0cm

開放F値             F1.8〜22

最大径×長さ      65x 68.5mm

フィルター径      58mm

重さ      345g

一番強いレンズだと思っているこのレンズは、実は持ち運ぶには結構重い。しかもフードが何だか中途半端な感じで付いているので、これは好き嫌いがあるかもだけど、個人的には唯一ちょっと不満点。なんかドナル○ダックの口みたいな形なので、ちょっとコミカルが過ぎる。なお、このレンズのウエポン化、というワードがあるので、どうしてもこれが嫌だという場合には、試してみてもいいかもしれない。筆者はやったことがないので何とも言えないが、先に言ってしまうとこのレンズのゴーストやフレアも筆者はとても好ましいと感じている。ただパープルフリンジも出る。

比べてみるとこんな感じ。

大きさも外見も当然ながら全然違う。FA時代とK時代なのだからそりゃあ当然といえば当然だが。やはり、Limitedはアルミ削り出しという言葉が示す通り、思わず触るのを躊躇ってしまうくらい冷たい質感のレンズ。気軽に持ち出すなら30、じっくり被写体と向き合いたいときは31、なのだろうか。いやいや、もちろんそんなことはないだろう。写真は自由なのだから。

最後に少し作例。

中途半端な作例だけど、遠景はやっぱり十八番。
藤の枝がドバーッ!と生えてきた(意味不明)
つつじのこの…水しぶき感覚(意味不明)

うまく説明できないけど、何気なく「いいな」と思って撮った写真が、ちゃんとあとで見返したときに「いいな」と思えるほどきちんと残せるということが、本当にいいレンズなのだと思う。ちょっと詩的で腹が立つけど、残念ながらこれ以上ちゃんと表現できないのが悔しい。基本的に「世界が俺に撮られたがっていない」はあまり起こりえないのかもしれない。

シチュエーション別作例

さて、以下は恒例のシチュエーション比較。1mmしか変わらないこの2つのレンズ、どちらを使うべきか?の問いに対して、一定の解を示せれば幸甚である。

遠景・順光(f8,1/320)

30/2.8
31/1.8
拡大。

こちらは、カメヌマフォトウォークin葛西臨海公園の時の写真。この日は快晴で、明暗のコントラストがはっきりしていたように思う。さて、まずはよく使うシチュエーションである遠景・順光であるが、しっかり絞ったf8において、両者とも大きい差はないように思う。両方の画像を拡大して見た場合でも、大きい差はないように見える。

遠景・半逆光(f8,1/320)

30/2.8
31/1.8

続いて遠景・半逆光。30/2.8のほうが同じ絞り・SSの場合でなぜか少しアンダー目。一方の31/1.8はちょっとフレア気味。よく言えばクリアな感じだけど、悪く言えば白飛びしている。適正露出だったつもりだったけど…。

近接・日陰(f8,1/60)

30/2.8
31/1.8

こちらは光源を出すための写真。被写体を近めに持ってきさえすれば、背景の光源が絞りの形になる。当然開放時には丸く写る。さて、今回はどうかというと、できるだけ葉っぱの先、写真右側を中心にご覧いただきたいのだが、30/2.8の方は五角形、31/1.8の方はちょっと角が見えるけど九角形ということもありほぼほぼ丸く見える。これはようやく目に見えるはっきりした差だと思う。

日陰・逆光(それぞれ開放,1/1000)

30/2.8
31/1.8

なんと予期せぬハプニングが。30/2.8のほうは、バブルボケだったようだ。

バブルボケ。

バブルボケとは、以前紹介したレンズのように、輪郭がはっきりした丸ボケ、と勝手に呼んでいるが、このレンズもそうだったのかという新たな驚きだった。そしてゴーストも派手に出ている。実にオールドレンズらしい写り。

31/1.8は、ゴーストはほぼなく、いい写りだなあと思う反面、やっぱり噂通り、パープルフリンジがすごい。

紫になっている部分がパープルフリンジ。

パープルフリンジとは、高輝度部分に隣り合った低輝度部分に紫色やマゼンタ色の偽色が出る現象のこと、とのことで、要するにめちゃくちゃ明るいマスの横には紫とかの色が出てしまうという現象らしい。

ということで、それなりに複数のシチュエーションで撮影を行った。使ってみた感想としては、正直、画角も変わらない以上、撮影した画に大きい差はない…のが率直な意見。では若き筆者が感じたあの感覚はいったい何だったのだろうか。若気の至りというやつか。筆者はアマチュアゆえ作例が大したことないのはご容赦願いたいものだが、ただはっきり言えるのは、31/1.8はパープルフリンジがすごく出る。出ない方法はないものか。あるじゃあないか。今はこれのHD版が現行品である。

だからこそ、今回の31/1.8もめくるめく「古の鏡筒」というわけだ。

入手例

まず30/2.8については、流通量が圧倒的に他の広角レンズより少ない印象。例えばどこかの中古カメラ屋さんに入って、Kマウントのコーナーを見て、広角レンズを探すとすると、たいてい28mmとか24mmは見つかるが、これはほとんど見かけない。あったらラッキーくらいなイメージ。もちろんネットでは転売ヤーとかいう悪い大人がおり、彼らも販売しているが、たいてい「いやいやそんな値段はありえんよ」という価格で売っているので、見つけても無視してよいと思う。個人的には、10-15Kで買えればまあちょっと割高だけどアリかなという感覚。それだけの価値があると思う。でもこの値段のつき方も、ちょっと流通量が少ないがゆえの希少性から来るものだと思うので、性能とコストを重視する方は、もう少し安く買うほうが精神衛生上よろしいと思う。

他方、31/1.8については、いまだに販売は公式でも行っているようだが、実はもう型落ちと呼ばれる位置づけになってしまった。現在は、先に述べた通り、パープルフリンジやその他諸々の光学性能をより改善したHD版が販売されており、今からペンタックスを深める場合はこちらを購入することをおススメする。いやマジで。とはいえそもそもこのレンズ自体、フィルムに合わせて設計されたものだから、多少の誤差は全然気にしない…といえばウソになるけど、そうした不便さを味わえるのも、昔から使っているという証左。ペンタキシアンでよかった。

おわりに

今回は作例も多めで、比較的文章も多めにした、思い入れの強い回。

まずは恒例の今回のサブタイトル。これは、めくるめくシリーズの10回目ということで、某特撮ヒーロー平成10作目からのもじり。これもまた以前紹介した、というより筆者が初めて投稿した文章のBlackbird,flyをアイテムとして用いているので、なんだかんだカメラと縁のある作品なのかもしれない。Journey through the decadeは本当にいい曲だと思う。

さて。冒頭で述べた通り、筆者はこの31/1.8にかなり思い入れがある。彼と色んな国を旅してきた。それこそこの間紹介したモルディブも、あるいは別のところも、なんだかんだ言いながら彼を一番使っていたかもしれない。筆者の個体は、色々な国に付き合ってもらったからなのか、あるいはかれこれ10年近く使っているからか、すでに2回くらいメンテに出している。その分だけ愛着も湧くというものだ。しかし、くどいようだが、ここまで30/2.8が肉薄するとは正直思っていなかった。いつぞやのプラナーと比較したリケノンくらい差がはっきり出るのかなと思っていたが、実はそこまで差がなかった、というのはちょっとショックだったりする。でもあのレンズ結構すごいんだなぁと見直せてよかった。でもやっぱりちょっと心の中に何かが残る感じはある。

筆者「…悪ぃ、やっぱ辛えわ…」

?1「……そりゃ 辛えでしょ…」

?2「…ちゃんと言えたじゃねえか」

?3「…聞けてよかった」

(「?」となった方はFF15でググると幸せになれるかも…?)

レンズは、あなたを深みへ誘う。

どうかよいカメラライフでありますように。

この沼に住む人
青狐

レンズ沼、カメラ沼に誘い込む狐。フィルムで多重露光大好き。ピンボケ、露出オーバー・アンダーなんでもござれ。

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カメヌマ

コメント

  1. […] 前も紹介したかもしれないが、この頃FA31mmを手に入れ、有頂天だった。残念ながらボディは、当時一番安かった、保有している中で唯一のデジタル一眼であったが、今になってみれば、 […]

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