オールドレンズに興味がある人なら一度は耳にしたことがあるくらいには有名なTakumarシリーズの55mm F1.8。このレンズは長きに渡る間、生産されたため、色々と同じレンズでも微妙に違いがあります。今回は各世代のタクマー55mm F1.8を集めて比較を行いました。
タクマーシリーズの55mm F1.8について
なぜこのレンズが有名になっているかという話ですが、やはりこのレンズで撮影したときに発生するフレアやゴーストでしょう。絞りを開放にして少しでも太陽に向けようものなら、画面全体がふんわりと白くなり、また角度によっては虹色のゴーストが出ることもよくあります。
このような写真が撮りたくてオールドレンズを始めるという人も少なくないと思います。そのような写真を撮るならば、まずはスーパータクマーだよなんて書いてある情報も少なくないと思います。この後に書いてありますが、タクマーシリーズの55mm F1.8には種類がありますので、ちゃんと選んで購入しなければ、希望の描写を得ることはできないかもしれません。
各種のタクマー55mm F1.8
今回集めたタクマーはこちらの7種類です。詳しい解説はネット上にたくさんありますので、そちらに任せるとして、ここでは簡単に紹介していきます。
Auto Takumar 55mm F1.8(ゼブラ)
最初に紹介してますが、こいつだけ見た目が他のタクマーとは違っています。鏡筒が白黒になっているのでゼブラと呼ばれているタイプです。Auto Takumarは比較的古いタイプのタクマーですが、どんな描写になるでしょう?コーティング技術がそこまで発達している時代ではないので盛大にフレアが出るとか期待されます。
よく見てみるとこのゼブラタイプのタクマーだけは、最短撮影距離が0.55mになっています。これ以降の世代は0.45mなのでゼブラタイプは寄れいないレンズと言えます。逆にそれ以外は0.45mまで寄れるようになっていると。
Auto Takumar 55mm F1.8
こちらはゼブラではないタクマーです。名前は同じですが、見た目が明らかに違います。はたして、描写について、ゼブラとは違いがあるでしょうか?
上にも書いた通り、このタイプからは最短撮影距離が0.45mになっています。
Super Takumar 55mm F1.8(前期型)
Auto Takumarの後続モデルのSuper Takumarです。これには前期型と後期型がありまして、その違いはアトムレンズが使われているかどうかになります。後期型からアトムレンズが使われており、前期型はアトムレンズが使われていない方になります(Auto Takumar もアトムレンズは使用無し)。もしかしたらコーティングがAuto Takumar より進歩しているかも??
Super Takumar 55mm F1.8(後期型)
こちらはアトムレンズが使われているタイプのSuper Takumar です。ただレンズの材質変更があったにもかかわらず、レンズ構成自体に変更はありません。なんか不思議な気がします。
またアトムレンズが使われているため、レンズが黄色く変色しているものが多いです(私が持っているものはそこまで黄色くなっていません)。アトムレンズで性能が向上しているのかもしれませんが、どんな写りになるでしょうか。
Super Multi Coated Takumar 55mm F1.8
Super Takumar の後続モデルです。その名の通りマルチコート化されているので、コントラストの向上や逆光耐性も向上している可能性が高いです。結果はどうでしょうか。
SMC Takumar 55mm F1.8
Super Multi Coated Takumar の後続モデルで、M42マウントでは最後のモデルになります。このあたりはアトムレンズの使用はされていないようです。絞り連動機構の違いだけで、Super Multi Coated Takumar と同じと言われていますが、どうでしょう?
SMC PENTAX 55mm F1.8(Kマウント)
これはこれまで紹介したTakumar とは違ってM42マウントではありません。しかも名前もTakumar ではなくなっていますので厳密にはタクマーではないのですが、今回はレンズ構成が同じということで比較に加えてみました。一番新しいモデルになるわけですが、その実力を見てみましょう。
各種タクマーの黄変比較
一部のタクマーはアトムレンズを使用しているため、経年で黄色く変色する現象が出ているものがあります。黄変が出ているレンズは見たときに向こう側が黄色く見える訳ですが、コーティングによって少し黄色く見える可能性もありますので、黄変とも言い切れないところもあります。
下に今回比較に使ったレンズを並べてみました。ティッシュを背景にして色温度を一定にして撮っています。
Super Takumar後期型あたりがアトムレンズが入っているので、少し黄色味があるように見えます。それでもあまり黄変していない個体なのでしょう。ネット上にはもっと黄色いレンズが上がってたりするので。
タクマーシリーズ55/1.8比較(実写編)
ここからは実写で比較していきます。まずは絞り開放での比較です。被写体は十月桜が咲いていたのでそちらです。
まず後ろのボケですが、ゼブラの玉ボケが一番エッジが溶けているように感じます。ただこうやって比較して少しだけそう感じる程度の違いですね。また枝の部分のコントラストが世代が進むにつれて向上しているように見えます。それでもほんの少しの違いですね。
次はF4まで絞ってみました。
どのレンズも絞るとシャッキとしてきますね。それぞれの差が無くなってきているようにも見えます。後ろのボケの形をよく見るとゼブラ以外は多角形になっていますが、ゼブラは少し丸さを維持していますね。ゼブラはプリセット絞りで絞り羽の枚数が多いからだと思います。
続いては近めにピントを合わせて後ろをボカして比較しました。
ゼブラが一番色が濃く見えます。普通に考えると新しい方が発色がよくなりそうなものですが、不思議です(同じ設定で撮ったはずですが)。太陽の角度とか雲で少し隠れたとかそうゆう影響もあるのかもしれません。
後ろのボケはほとんど同じに見えます(SMC PENTAXだけ少しだけ柔らかいかも??)
次は逆光耐性を比較しました。これが一番違いが出ております。
特徴的な虹色の輪のようなゴーストが出ているのはゼブラとSuper Takumarの前期、後期あとはSuper Multi Coated Takumarでした。この描写が欲しくてタクマーを買う人はこの点に注意してくださいね。特にSMC Takumarからは逆光耐性が向上しているのか、このようなゴーストは全然見えません。
お次は点光源での玉ボケ比較です。
最短撮影距離に固定して作例を撮ったので、最短撮影距離が長いゼブラだけは玉ボケが少し小さいです。あとゼブラじゃない方のAuto Takumarは絞りが完全に開いていないようです。中を見た感じでは完全に開いているように見えるのですが、B級品を購入しているのでそれが影響したのかもです。
それ以外はあまり違いがあるようには見えませんね。点光源での玉ボケはそこまで違いは出ないようです。
最後はおまけですが、遠景での比較です。このレンズで遠景を積極的に撮るようなものでもないかと思いますが、一応ご参考までにどうぞ。
左右の木のコントラストが世代に進むにつれて向上している気がします。解像感としてはそんなに変わらないですね。
まとめ
今回はオールドレンズの王道とも言えるタクマー55/1.8を7種類比較してみました。
やはり最も違いが出たのは逆光耐性でしたね。特に新しい世代では逆光に強くなっていました。オールドレンズらしい逆光への弱さが欲しいのであれば、そのあたりに注目して購入するといいかもしれません。またボケはあまり違いが見えませんでした。やはり大きな部分がレンズ構成で決まってしまうのかもしれませんね。
コメント
[…] のため、焦点距離が長くないといけなかったらしい。言われてみれば、このブログでも55mm f1.8を紹介していたが、当時はその55/1.8が標準レンズという位置づけだったことを踏まえれば、 […]
[…] Super-Multi-Coated TAKUMAR 55mm f1.8は1971年に発売されたレンズです。タクマーシリーズも豊富なので数え始めると枚挙にいとまがありません。詳細は「カメヌマ」さん、「コセキカメラ」さん、「Wikipedia」をご覧いただければと思います。 […]