――地球はまわる 君をのせて
はじめに
旅行がしたい。
その思いで前回、海外フォトウォークにも出かけづらい昨今だからこそ、このテーマで書き始めてみた。
いつものフィルムOCやインスタグラムのDMにて、とてもいい感想をたくさんいただけた。
ご感想をいただけた皆様には、この場を借りて改めて感謝申し上げます。
引き続き頑張って参りますので、もし見かけたら筆者あてに励ましのメッセージを頂けると幸いです。
このみんなで書いている共同ブログにおいて、実はもう19稿目。色々手を変え品を変え、いろんな側面からカメラに向き合ってきたと思う。今回は、カメラと旅行、という題材だけれども、結局のところ、皆様のカメラライフが充実すれば、それでよいと思う。
場所および経緯
今回の題材はカンボジア。
今回もまた、筆者がシンガポールにいた時に近隣国を訪れた際の記録となる。なぜこんなにガンガン近隣国に行っているのかは、前回の経緯をご参照されたい。
たしか、この時は12月に差し掛かるころのことだっただろうか。年度末に向けての準備が諸々片付いた、というのと、まあプライベートで色々あったので独りで出かけようと思っていた。
また、この当時は東南アジアにおけるハードロックカフェのピンバッチを集めるのにハマっていて、当時の選定基準としては「それなりに撮影甲斐のある、HRCがある街」というものだった。残念ながらモルディブにはなかったが、それでもその当時はそんなこと考える余裕すらなかったわけで。
それで、とりあえず検索してみると、近隣のカンボジアはHRCを備えるばっちりな国だったわけだ。ただし、カンボジアに入る際は、入国ビザが必要で、インターネットによるとビザ申請から発給まで3週間かかる、と言われており、結局最短でもクリスマスイブになろうかという状況であったため、やむなくホリデープライスでの出発を決定。
こういう風に書くと滅茶苦茶高い金払ってる?なんて思われるのだが、実はカンボジアにした決め手はその値段である。今回の旅において、たしか移動費込みでトータル3万円程度しかかかっておらず、どこかのサンゴ礁の国に行く予算があったら無限に行ける。もちろん事前に外務省ホームページ等を確認したうえ、できるだけ安全なホテルを選定し、予約をした。
申請から2週間程度で無事にビザ発給もされ、いざ…と思いきや、そもそもカンボジアで何するの?アンコールワットってめっちゃ広いし、何か他にないんかね…と、出発直前1週間前までほぼノープランという体たらく。だって仕事が忙しかったしっていうのはさておき、とりあえずもう少し情報を漁ってみたところ、スタジオジブリの誇る名作映画、天空の城ラピュタのモチーフになったベンメリア遺跡がある、とのことだった。
これにはさすがに驚いた。それはもうシータがいきなり降ってきたぐらいには。
アクセス等を調べるとえらく不安定な方法だったので、オプショナルツアーを即座に申し込む。ぶっちゃけアンコールワット他遺跡群をめぐるツアーもそこのサイトで一緒に申し込んだ。それくらい交通の便は悪い。
こうして直前でラピュタ発見に匹敵するテンションぶち上げの事象が発生し、筆者は40秒で支度を済ませ、意気揚々とチャンギ国際空港へと向かった。


旅程
全部で2泊3日。
1日目には、先のベンメリア遺跡を巡るツアーを、2日目にはアンコールワット遺跡群を巡るツアーを入れ込んだ。正直、この2日目の内容については、ほぼ丸一日オプショナルツアーの内容だったので、機会があれば記事化したいけど、そこまで特筆すべき内容でもないかな…と思うので割愛する。
アクセス
シンガポールから、直行便で約1時間20分程度ののちシェムリアップ空港へ到着。
全日快晴であり、天候には恵まれた。


今回の旅は予算に相当余裕があったので、空港からリムジンをつけてみた。現地は12月ながらうだるような暑さで、できれば屋内のクーラーで涼みたいなぁと思っていた矢先、閑散とした雰囲気を破るかのような豪奢なリムジンが到着し、筆者を中に入れてくれた。

中に入るとしっかり空調の効いた、これまたカネのかかった作りで、まさかここまでとは…と、若干引き気味だったのは記憶に新しい。
使用機材
この旅ではK-3+FALimited 31mmをチョイス。
なぜAPS-Cを?と思った読者の諸兄諸姉は正しい。
筆者は、事前にカンボジアについて調べていたのだが、やはり治安がどうしても悪いよ!という情報のうえ、いまだに一部地域では地雷原なんかがあるよ!という安全な国に住む我々の常識では測れないくらいヤバイ情報しか入ってこず、比較的安価なボディのK-3をセレクトした。レンズも、一番思い入れのあるやつだけで!というかなり潔い装備だった。だが、人間、意外とないものねだりはしないんだなぁということをこの旅で学んだ。
記録


比較的安全なホテルを選定したはずだったが、それはホテル内部での話であって、この周辺の地域は結構荒れていた。とはいえそれも醍醐味。筆者はそうした辛酸を舐めてきたという自負がある。




ホテルに着いたのは昼前だったので、目の前の通りでトゥクトゥクを呼ぶ。なお、流しでもどこに連れ去られるかわからないうえ、現地では英語が通じない、との事前情報だったので、多少割高でもホテル前のトゥクトゥクをチャーターしたほうが安全である。実際、ホテル前の方が英語が通じたので、安全だった。安全を金で買う、というのは冗談のように聞こえて割とマジだったりする。
まずはハードロックカフェへ向かった。たしか往復USD10だった気がする。当時千円くらい。日本のタクシーと同じじゃん、というイメージ。当然後部座席は箱みたいなのに乗せられてひどく安定性が悪い。でも案外、世界の辺境を旅している感は味わえるので一度はやってみてほしい。なお、HRCのピンバッチは1個USD20だったのはちょっと資本主義を感じた。
ホテル前に着くと、筆者を待つ日本語対応可能な現地スタッフがベンメリア遺跡までのツアーを行うよ、というプラカードを持っていた。あとは筆者だけだったので、そそくさと荷物を部屋に置き、エントランスへ向かった。
道中はバンでの移動だった。車内では、カンボジアにまつわる歴史、ベンメリア遺跡に関する情報について説明があった。内容については割愛するが、とにかく、色々凄絶だったらしい。

ガイドの方いわく、未だにこの辺りのジャングルには地雷が埋まっていて、それで毎年何人かが大けがを負うのだという。筆者も一生懸命やっているが、では筆者のやっていることはいったい何なのだろうという少しアンニュイな気持ちになった。クリスマスに心を痛めながら、世界平和について考えたのであった。
そんな哲学的なことを考えていたら、シェムリアップの町からおよそ車で2時間、ようやく到着した。でこぼこの悪路を走破した先で出迎えてくれたのは、蛇神(ナーガ)像だった。




第一印象としては、静謐、という言葉が思い浮かんだ。所謂観光地によくある、いかがわしいバッタモノ屋さんとかうるさい客引きは一切おらず、とにかく夕暮れ前の静かな雰囲気の中、散策ができた。
どうやらこのベンメリア遺跡のナーガ像は、周辺の遺跡の中で一番きれいに現存している、ということもあり、この遺跡群では複数散見された。





ベンメリア遺跡は、もともと内紛や隣国アユタヤ朝など外部からの侵攻により1432年にクメール王朝が滅ぶと、密林の中に長く眠っており、その存在は長く忘れ去られていたという遺跡だったらしい。1860年、フランスの植物学者によってアンコール遺跡群の一部が発見されたが、1970年代、ポル・ポト政権による独裁政治が敷かれたカンボジアにおいて、激しい内戦が起きていたため、遺跡群はことごとく戦禍を被り、現在のような状態になったという。
やがて平和が戻り、1992年にユネスコの世界文化遺産に登録されたと同時に危機遺産リストにも登録されるという経緯があったそうだ。そこから懸命な遺跡の保護活動が始まり、2004年に危機遺産リストから外されたそうだが、「ベンメリア(=現地で蓮池の意)」は原型をとどめないほど崩壊が進み、いまだ修復されることなく発見当時のまま放置されているとのこと。
諸行無常である。

時間になったのでバンに乗って帰っている道中、スイカ畑に着いた。ガイドさんがおもむろに外出を促したため、訳も分からず外に出ると、夕暮れというよりはもう暮れに時間に沈む夕日が見ることができた。先の戦禍を見た後だったので、やけにセンチメンタルな気分になった。
世界は平和になるのか、あるいはできるのだろうか。
おわりに
今回は、自身も初となるAPS-Cでの記事作成。
でもレンズの実力が高いのか、よく写っているような気もする。実際、カンボジア観光の8割以上は遺跡巡りだと思う。もちろん、現地での移動は旅慣れている人であっても相当リスクがあるので、もし可能なら出発前にすべて手配してしまうことをお勧めする。何度も言うが、金で安全は買えるのである。下手にケチって余計なトラブルに巻き込まれないよう、注意されたい。
今回は以上!
ご意見・ご感想等あれば、是非筆者まで…。
画を写さんと欲すれば、まず旅をせよ。
どうかよいカメラライフでありますように。
コメント
[…] 今回の経緯は、前回と前々回とは多少異なる。 […]