フジタ66SL シャッター幕貼り換え 後編【分解・修理】

執筆者:e51

 前編からの続きになります。

前編はこちらになります。

それでは後編のスタートです。

シャッター幕の貼り換え

1. 古いシャッター幕の除去

 カチカチ、ヨレヨレの切れたシャッター幕を軸から外します。

 接着剤で付いていますので、無水エタノールやベンジンを流しながらゆっくり引きはがします。貼り換えの位置の参考になりますので、シャッターユニットを抜いた時に幕の位置が分かるように写真を撮っておきます。

 この個体はシャッターが切れた状態で、この位置に幕が止まっていましたので、後幕が走り終わった時にこの位置になるように貼り直そうと思います。

 まずは幕にかかったテンションをリリースするために、ドラムにかかっている針金を外します。外すとズギューンとバネが戻る音がします。

 次に先幕の位置を決めるギアも外します。これは上に引き上げるだけで外れます。

 外す時に、ギアの裏側にある突起がどこの位置になるか確認をしておきます。先ほどのユニットを引き出す時の青丸のネジを外すと(下写真)

 このように軸関係が外れます。この方が幕を剥がしやすいと思いますが、余計なところが外れると厄介なので、私は元に戻して作業しました。

 幕を外した後は、軸に残った接着剤を無水エタノールで掃除します。かなり固く残っていますので、持っていればトルエン等有機溶剤で掃除すると早いです。

 先幕と後幕が重なり合う部分には、幕を挟み込むようにして鉄のガイドが付いています。これは再利用するので、極力変形させないように広げて幕を外します。両端は突起が付いていて幕から外れないようにしてあります。私は精密ドライバーを削って、ノミ状にしたものを差し込んで外しました。

 両サイドの突起を外してしまえば、幕をそのまま引っこ抜くことも出来そうですが、リボンが切れるような幕は劣化しているので、溝の中にちぎれた幕が残る可能性があります。

 また、交換する時に新しい幕をその溝に入れなくてはいけないので、どうしても溝にある程度広さが必要になります。溝を広げようとしてドライバーを抉ると、鉄が柔らかくて伸びてしまいますので、ちまちまドライバーを差し込んではズラす作業を繰り返しました。それでもこれだけガイドがヨレてしまいました。

このガイドが変形しているとシャッター幕が正常に動かなくなります。スクレーバーにヨレたガイドをかませて、溝を広げると同時にヨレの修正を行います。

 この作業は、なるべくガイドを変形させないように開くというだけなので、他にいい方法があればそれで作業を行えばいいと思います。

2. 新しいシャッター幕の作製

新しい幕を用意します。

シャッター幕は市販のものを購入し、外した幕の寸法を計り、切り出しました。

 切り出した幕にガイドを取り付けます。

 最初ペンチで挟みましたが、ガイドが歪んで取り付け中に幕がガイドから抜けたので、ガイドの溝に少しG17ボンドを入れ、最後に万力でガイドを挟み、溝を閉じると同時に平面を出しました。

 短い方が先幕。長い方が後幕です。

3. 先幕の貼り付け

幕の取り付け作業です。

 幕面はゴムの付いた方がレンズ側、布の方がフイルム側です。

 私はG17ボンドを使用しましたが、両面テープでも大丈夫!という人もいるので、きちんと固定さえできれば何でもいいと思います。

 最初に先幕を貼ります。

 バネの入ったドラム側に幕本体、軸側に細い方を接着します。先幕は取り付け位置を最初に考える必要はありません。ただ軸に平行になる事だけに気を付けます。

 先幕の位置は貼った後にボディー側のギアで調整します。先幕は本体も細い方も、上下にある細い銀色の棒の下側から接着します。後ろ幕はこの棒の上側からの接着です。下の写真は先幕を貼った後、ドラムにテンションをかけて巻き上げた状態です。

 上下に金属の棒が見えるように貼り付いています。

4. 後幕の貼り付け

次に後幕の貼り付けです。

 ここでも平行に貼るという事に気を付けます。

 後幕は貼り付けに位置があります。先幕の逆で下のドラム側に幕の細い方、上のギアの付いた軸に幕本体を接着します。シャッターをリリースした状態でガイドの金属が、取り出した時の写真(下の写真)のように一番下になるようにします。

 細い方は下のドラムに貼り付け、常にテンションがかかった状態にするので、位置を決めるのは上部奥にある軸に、幕本体側を貼り付ける時に行います。

  幕本体を貼り付ける軸は、幕を下に引っ張る方向に回すとロックがかかります。それがシャッターリリースされた状態なので、その位置に固定して貼り付け作業をします。

 金属部分を目的の位置に合わせて、幕をピンと張った状態でロックまで回した軸に貼り付けるだけなのですが、幕は軸を巻き込むくらい長さがあるので、ちょっと工夫が必要です。

 私は上の写真のように軸をロックするまで回した後、そこに細く切った両面テープを貼りました。

 ここに幕を乗せると仮の固定が出来ます。仮の固定が出来れば幕はたるんでも大丈夫なので、作業がやりやすくなります。写真はちょっとわかりにくいですが、幕側の余った部分を軸と軸の間を通し、そこに接着剤を塗り、まだ固定していないドラム側を反対側に投げだしてあります。

 この状態にすると、両面テープで固定した先の方を軸に接着できるので、仮止めの両面テープはそのままで幕全体の固定が出来ます。投げ出した細い方は戻して、そのまま平行に気を付けて下のドラムに貼るだけです。

5. シャッターの調整

 シャッターを調整するためにドラムにテンションをかけます。

 動作確認のためなので。キツキツにかける必要はありません。巻きすぎるとドラム内のバネが折れますので注意します。

 ドライバーで軸を回して、少し重くなったところで初めに外した針金のロックをかけます。先幕の位置は赤丸のギアを取り外した上の赤丸のパーツで、固定することで行います。

 シャッターを切った状態で合わせるので、後ろ幕が走り切った状態にして、金具部分がぴったり合うより少し重なるくらいの状態になるように赤丸ギアを巻きます。そこに赤丸パーツを嵌めるのですが、嵌める位置があります。

 ちょっと写真が見えにくいのですが、裏にあるポッチがパーツを嵌める支柱の下にあるギア上の四角い突起とそれを止めるストッパーの間に入るようにします。(ちょうど支柱の影になっている部分)

 このパーツを入れるとシャッター幕は固定されますので、後は後幕のテンションをかけると、シャッターの動作確認ができるようになります。ピンボケですが、赤丸の突起が矢印先の隙間に入り込むようにします。

 先幕にはテンションがかかっていて、手を離した時にロックの壁側に固定パーツが回るようになっていますので、壁ピッタリの状態で入れないと先幕が走りすぎて後幕との間に隙間が空きます。

 何度でもやり直しがききますので、いい位置で固定できるように調整します。最初に外したシャッターダイヤルを戻すと、巻き上げからリリースの動作確認が出来ます。

組み直し

 組み戻しは、外した時と全く逆の順序で行っていけばいいだけです。気を付けるのは、外したフラッシュ接点のギアの位置です。これがズレると、巻き上げが出来なかったり、途中で引っかかってしまったりします。

 位置はだいたいこうなります(シャッターが巻き上がった状態)。

 リリースされた状態。

 一番最初に書きましたように、フジタ66の難しいのは、組み戻す時にネジ穴の遊び程度のズレで動かなくなる事です。動きが渋いからとむやみに注油すると、オイルの粘性で動きが悪くなったりします。

 また、金属が柔らかいので、太い金属パーツがよく見ると歪んでいたりします。組みながらのパーツの修正や取り付け位置の修正が一番厄介です。

 根気よくやりましょう!

 最後に剥がした貼り革を作ります。

 いろいろな方法がありますが、私はマスキングテープを使って型紙を作り、要らなくなった革ジャンの革を切って貼りました。

 まずはマスキングテープを貼り革部分に隙間なく貼っていきます。

 この作業を剥がした部分全てに行い、そっとテープを剥がしてコピー用紙に張り付けてコピーします。黒い点はネジ穴の位置です。

 切り抜いて本体に合わせて微調整を行います。

 型紙が出来たら使用する革に貼り付けて切り抜きます。それをG17ボンドで接着します。

 これでだいたい完成です。

 シャッタースピードの調整は横のカバーを外せば出来ますので、後からやっても大丈夫です。

終わりに

 バルナックライカ等、いまだに人気のあるカメラは分解修理の参考資料がたくさんありますが、フジタ66のようなマイナーなカメラは資料も少なく、故障しても修理する業者がなかなか見つからず、修理費用も高額となる事が多々あります。

 貴重なフイルムカメラ資源を残すためにも、個人個人が得た構造、修理方法等、様々な知識を管理し共有することが必要ではないかと思われます。

コメント

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