フジタ66SL シャッター幕貼り換え 前編【分解・修理】

執筆者:e51

 このカメラは、当薬局の患者さんが不要になったため、「欲しい人にあげても売ってもいいから。」と言って、持ってきてくださった個体です。

 6×6サイズのカメラですが、コンパクトな造りになっています。私の知らないカメラでしたのでネット検索したところ、以下のような情報が得られました。

カメラ名称 フジタ66SL型

製造メーカー フジタ光機

発売日 1958年9月

シャッター 布幕フォーカルプレーン B・1/5~1/500

フイルム・サイズ 120フイルム 6×6

いただいた時の状態は、巻き上げダイヤル動かず、シャッター切れずでした。 フイルム室を開けるとこのような状態

 シャッター幕が寄れているので、フォーカルプレーンシャッターのリボンが切れていると判断。 幕を触るとカチカチになっており、写真に見えるシワがそのまま固まっている状態です。

 また、ネット検索情報によりますと、幕とリボンが一体になっているとの事でしたので、修理はシャッター幕の貼り換えという事になると思われます。

 このカメラ、周囲を見渡しても分解するきっかけがよく分かりません。

 ネット上の情報では、横にシャッターユニットがズボッと抜けるようです。フジタ66はそれら以外あまり情報がありませんので、大まかな事は分かっても、どうやって修理したらいいのかさっぱり分かりません。

 今回は今後の修理の参考資料として、写真を多めにして手順が分かるように記載したいと思います。 ただし私は素人であり、この手順が合っているという保証は全くありません。逆に、間違った事をしている可能性も高いです。そこのところは、大人の判断で分解修理するにあたっての、参考程度にしていただけたら幸いに思います。

貼り革の除去

 まずシャッターユニットが横に抜けるとの事なので、巻き上げ側の貼り革を剥がします。 通常の古い二眼レフ同様、薄くてパリパリに硬化している貼り革です。

 少し浮いているところがあったので、そこに無水エタノールを入れたり、ドライヤーで温めたりして貼り革の再利用を考えましたが、どうやっても割れてしまうので再利用は諦めて、バキバキに割って剥がしました。

 上の写真では左下のカバーが外されていますが、ここはネジ2本で止まっているものでシャッター幕のテンションを調整するところです。貼り革を剥がす時は、かなり周囲に力がかかりますので、極力カバー類は外さない状態のほうがいいです。

 私はマイナスドライバーをヤスリで削ってノミ状にしたもので剥がしましたが、すっぽ抜けた時に重要なパーツを傷める原因になります。

 反対側も同じく貼り革を剥がします。

 アクセサリーシューと吊り金の一部は貼り革の上に載っていますので、外しておきます。

 上の写真の右上のギアはフラッシュの接点スイッチです。幕どの位置で止まっているかによっては、その位置が組む時の参考になりますので、記録するといいです。

シャッターユニット取り外し準備(巻き上げ側)

 シャッターユニットを取り外すのに邪魔なパーツを取り外します。 このカメラは、パーツの素材である鉄が柔らかく、変形しやすいのが問題点です。また、ネジ穴の遊びが大きく、組み上げる時に位置がズレると動作しません。

 くれぐれも余計な力を入れてパーツを変形させないようにして下さい。各部を外す時に、写真を撮影して位置関係を記録しておくといいです。

 巻き上げダイヤルを取り外します。まず、ダイヤルの下にネジがありますので、そこを露出させるために貼り革を剥がします。ネジは2か所で、ダイヤルに開いている穴を水平にした時に現れます。

 貼り革部分の真ん中くらいを細いドライバー等で押して行って、ズボッと穴の開いたところと、その反対側だけ貼り革を剥がせばいいのですが、その部分だけ最後に補修するのは大変なので、全部剥がしてしまった方が楽かもしれません。

 巻き上げダイヤルを外す前にシャッターダイヤルを外します。赤丸の中のネジ一本で止まっています。

 赤丸のネジを外すと、1ネジ、2シャッター指標、3バネの順で外れます。組み上げる時は位置を合わせますが、決まった位置以外はぴったり入らないように、ピンがありますので安心です。

 シャッターダイヤルもこのまま抜けます。ダイヤル下に付いている突起でシャッタースピードを制御しますが、この位置は覚える必要ありません。

 次に巻き上げダイヤルを外します、

 穴を水平にした時に見えるネジ2本で止まっています。

 上から順にダイヤル、抑え板、円形ストッパーの順に外していきます。

 巻き上げ部のカバーを外します。

 赤丸1と2はカニ目レンチ。3はマイナスドライバーです。3はスローシャッターですが、ダイヤルは締めるだけで固定しますので、位置を覚える必要はありません。組み上げる時にクリックを確かめながら、数字がぴったりになるようにするだけです。

 次にカウンターユニットを取り外します。

 ネジは赤丸4本です。このユニットは、巻き上げとシャッターチャージを制御しますので、壊れていない限りいじらないようにします。私は分解して、バネを伸ばして1本ダメにして、さらに別のバネ1本紛失して大変な事になりました。

 カウンターユニットには本体とバネが1本繋がっているので、失くさないように気を付けます。

 カウンターユニットを外す時は下の写真の2の赤丸の下にある銀色の大きいギアが、固定用の支柱の下側に入り込むようになっているので、斜めにしながら外し、組み上げる時は同じように斜めにしながら組みます。

 カウンターユニットの下はこのようになっています。

 赤丸のギアの下に板がネジで固定してあって、それを外さないとシャッターユニットは外れません。 この状態でシャッターボタンを押してみて、見える駆動部分がどんな動きをするか見ておきます。 シャッターを押すとミラーがパカパカ動いて、何枚かの板がクイックにスライドするのが見えるはずです。それが無ければどこかバネが外れていたり、パーツが歪んでいる事が考えられます。

 ギアの下はこのようになっています。

 鎌みたいなパーツは、組む時に矢印の方向に回してテンションをかけて外したギアのストッパーとして働きます。ギアの根元のアームの下にはバネがかかっていて、写真上に持ち上げるようにテンションがかかっています。

 このアームを外すためにその先の金具を外しますが、これがシャッターリリースのための大切な金具で。これがスムーズに動かないとシャッターが動きません。

 下の写真の金具の下にはバネがかかっていて、矢印の方向にテンションがかかっています。外すとアームの赤丸の部分が隣のアームの下に潜り込んでいて、その先が外した板のスリットに入り込む構造になっています。

 アームを外したところです。

 今までの工程は、下の写真の赤丸の金具を外すための作業です。この金具が付いているとシャッターユニットが引っかかって外れません。

 2本のネジで固定されていますが、この金具はネジの遊び部分で少し動くようになっています。 その動きでアームの位置が微調整できるようになっているのですが、ほんのちょっとズレただけで、アームから先が上手く動かなくなります。

 外す前に金具の位置をケガいて元の位置に戻せるようにしておくと、組み上げる時に100万回の微調整をしなくて済むようになると思います。

 これでシャッターユニットを外す巻き上げ側の準備は終了です。

シャッターユニット取り外し準備(反対側)

 シャッターユニットは、巻き上げ側と反対側の両側で固定されていますので、反対側も下準備をします。固定ネジがフラッシュ同調ギアの下に隠れていますので外して、本体から伸びている接点コードのハンダを2本外します。

 赤丸が隠れているネジです。

 この外したコードは裏側からキチキチに張られて出ているので、ハンダを外したら、ミラーボックス内側からそっと抜いておきます。シャッターボタンを押すとミラーが上がるので、ピンセットで作業します。

 面倒くさいからと言って、シャッターユニットごと引き抜こうとすると、たぶんちぎれます。組み直す時、どうやったらこの穴に2本もコード通せるのよ?と思うくらいキチキチです。

 フラッシュ同調ギア側の下準備はこれだけです。

シャッターユニット取り外し

 ようやくシャッターユニットが引き抜けます。

 巻き上げ側はこの赤丸の4本のネジを外します。青丸は外すと幕軸が外れてしまうので外しません。

 フラッシュ同調ギア側は下の写真の赤丸4本です。

 後はミラーボックス内側に指を突っ込んで、巻き上げ側に押すだけなのですが、ユニットの継ぎ目に貼り革の糊が付いていたりすると簡単に外れません。継ぎ目に無水エタノールを流して糊を除去してゆっくり押します。

 ミラーボックス内には、連動するレバーや髪の毛のように細いバネがかかっていたりしますので、側壁以外の付属物のところは押さないように気を付けます。押す前に内部の写真を撮っておくといいです。すると、シャッターユニットがズボッと抜けます。

 この時、何かひっかかる物があれば、それは押し込まれたシャッターボタンですので引き出してやります。

 次はいよいよシャッター幕の貼り換えですが、それは後半に続きます・・・

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