2021年某所カメラ屋にて、こんなものを見つけた
Minoxとの出会い
これはMinox 35 MLといい、245gにして沈胴式レンズでフルサイズの写真が撮れる、現代版ローライ35ともいえるカメラだ。
これを手に入れてから、ミノックスという会社について調べた。ミノックスは、もともとこの35mmフィルムを使うシリーズよりむしろ、ずっと小さいミノックスフィルムを用いるカメラで有名で、このカメラは映画007にも出てくるスパイカメラであるだけでなく、第二次世界大戦や冷戦時代実際にスパイに使われていたというロマンあふれるものなのだ。
しかしこのミノックスフィルムは既に手に入らなくなっていて、当然現像もできない。たとえ撮れないとしてもこんな夢あふれるカメラを手にしたいと思い、中古のミノックスIIIsを手に入れたのであった。
シャッタースピード1/2〜1/1000.Bulb.Time
機械式カメラで、このサイズで1/2のスローシャッターから1/1000の高速シャッター、さらにバルブ撮影や一度押したらシャッターオープン、もう一度押すとクローズするタイム機能まで搭載している。
修理の過程で中身を拝見したが、無駄なくギッシリパーツが詰まったその中身は実に男心を刺激してくる。このIIIsはもともとシャッターは切れなかったが、意外と簡単な分解整備にていい音でシャッターが切れるようになってしまった。
…撮れるとわかってしまえば撮ってみたくなるのがカメラオタクなのである。
ハードル1:カートリッジの入手
フィルムを詰めてカメラに装填するためにはカートリッジ、あるいはパトローネと呼ばれる物が必要になる。ミノックスフィルムにおいてはこのパトローネからすでに貴重品なのだ。
私の場合はこの期限切れフィルムが4個入ったカメラをヤフオクで落札し、カメラ本体は売ってしまうという乱暴な方法で当面のカートリッジを入手した。
ハードル2:フィルムの切り出し
今、手に入るフィルムの一つに35mmフィルムがある。パーフォレーション部を除いた真ん中から、幅9mm×2のフィルムを切り出すことでミノックスフィルムと同じ形が作れるフィルムスリッターがあるとの情報を得た。
が、このフィルムスリッター、そうそう簡単に手に入らないのだ。私の場合は医療用に売られているメスと木の板を使ってフィルムスリッターを自作した。
ハードル3:現像
現像には、専用のデーライト現像タンクを用いて、現像液には最近の一液式現像液であるモノバスを採用。ちなみにこの現像液は1L 5,000円と相当高価なのだが、専用現像タンクがたった50ccしか現像液を使わないため1回の現像に使う液は250円分でしかない。(しかもこの現像液は16回ほど使えるとのこと)
ハードル4:データ化
例えば、35mmのリバーサルフィルムでは肉眼で見るだけで割と作品として楽しめるが、このミノックスでは画像サイズは11×8mmだ。これには既にある装備を用いて解決した。
使うのはデジタル一眼レフのD850とマクロレンズMicro-Nikkor 55mm f/2.8とスライドコピーアダプターのES-1だ。Nikon D850は標準機能としてネガフィルムデジタイズ機能というものがあり、シャッターを押すだけで高精度なデジタル化が可能になる。
Minox作例
そんな数々の困難を乗り越えで撮影した写真を以下にご紹介しよう
終わりに
初期費用はかなりかかったものの、この一式のおかげで今ではミノックスは我が家では圧倒的にローコストなカメラになっている。ズボンのコインポケットに忍ばせ、さっと出してスナップを撮る。実にお散歩のはかどるカメラである。
コメント