自家現像に要るものとその入手方法

執筆者:菊池アキ

 モノクロフィルムの自家現像に関する初心者向けの記事です。ここでは、自家現像に必要な道具や薬品とその手に入れ方を簡単に紹介します。

必要な薬品

 自家現像に必要な薬品は下記の五種類*1です。

1. 現像液

2. 停止液

3. 定着液

4. 水洗促進剤

5. 水切り剤

富士フィルムとイルフォードなら全部そろうので、そちらを中心に紹介します。

ヨドバシ.comやAmazonで購入可能。富士フィルムなら全部で三千円以下です。

1. 現像液

 富士フィルム:スーパープロドール、イルフォード:ID-11が代表的です。印画紙用現像液と間違わないように注意してください。

(補足)

 実は、上記の2種類はあまりおすすめではありません。粉剤なので溶かすのが面倒なのです。個人的な一押しはロジナール(rodinal, R09)。昔からひろく使われている高性能現像液で、様々な使い方が可能な万能現像液です。大手ではあまり取り扱いがありませんが、SILVERSALTなどで購入できます。

2. 停止液

富士フィルム:富士酢酸、イルフォード:ILFOSTOP

ようは薄めた酢酸、またはクエン酸です。

 スーパーなどで売っている掃除用や食品用のクエン酸で代用できます。その方が臭いも少ないですし、いいかと思います。

3. 定着液

富士フィルム:スーパーフジフィックス、イルフォード:RAPID FIXER

さまざまなメーカーから出ていますが、どれも大差ないと思われます。

4. 水洗促進剤

富士フィルム:QW、イルフォード:WASHAID

QWは粉なので少し溶かすのがめんどうですが、めちゃめちゃよく溶けるので別にいい気もします。これを使うとフィルムを水で洗う時間がとても短くなり、水道代の節約に貢献します。

5. 水切り剤

富士フィルム:ドライウェル(DW)、イルフォード:ILFOTOL

界面活性剤です。中性洗剤で代用できるという噂がありますが、確かめたことはありません。とんでもなく安いので素直に買うのがベストかと

必要な道具

いろいろあります。数えたら12種類でした。

1. 現像タンクとリール

2. ダークバッグ

3. フィルムピッカー

4. フィルムクリップ

5. 大きなビーカーもしくはボウル

6. かきまぜ棒

7. 保存容器(ペットボトル)

8. ろうと

9. はかり

10. ゴム手袋

11. 温度計

12. フィルムスリーブ

1-3については専用の道具が必要になります。あまり馴染みのないもので迷いがちですが、ちゃんと解説するので問題ありません。他は近所のスーパーとかでなんとかなるでしょう。

1. 現像タンクとリール

 パターソン(PATERSON)の製品をおすすめします。というかそれ以外は手に入りにくいです。一度に現像する数に合わせて、好きな大きさのものをどうぞ。リール付のものを購入するか、リールを別に買ってください。購入先は、SILVERSALTをおすすめします。種類が多く安価ですので。

(補足1)135フィルム(35mmフィルム)以外の方へ。

 パターソンはダメです(断言)。パターソンのリールは変形して中判とベスト判に対応できるというハイテク製品ですが、120フィルムを巻き取ることは実際にはあまりにも困難です。私の使った限りでは、120フィルムはLPLのステンレスリールならば問題ありません。

 それ以外のロールフィルムの場合は、リールの入手が難しくなります。一つの解決策としては、バケツか大きなボウルに現像液とフィルムを入れて、暗室で手で混ぜるという方法があります。

 シートフィルムの場合は、4×5ならパターソンタンクなどに入れられるリールが販売されています。また、ヨーボ(Jobo)のエキスパートタンクで4×5から8×10まで対応可能ですが、非常に高価なシステムとなります。印画紙のようにバットに液を入れて現像するのが安価です。(ただしセーフライト使用不可)

(補足2)パターソン以外のタンクについて。

 ヨーボの製品がいいと聞くのですが、高価なので使ったことがありません。憧れです。また、古いステンレスのタンクやリールが中古で安価に手に入ることもありますが、それも良い選択です。ただし歪んで光漏れを起こさないか気を付けてください。

 Amazonで検索するとやたら安い謎のタンクが販売されていますが、避けた方がいいかと思います。けっこう、タンクの品質って現像結果に影響するので……。

2. ダークバッグ

 暗袋とも言います。この中でタンクにフィルムを詰めます。各社から出ていますがなんでもいいです。なお、暗室のある方は不要です。

3. フィルムピッカー

 フィルムをリールに巻くために、フィルムの先端(ベロ)を取り出す道具です。現像以外でもなにかと重宝します。

4. フィルムクリップ

 現像したフィルムを吊るして乾燥させるためのクリップです。フィルムの下にも重りとして付けるので現像するフィルムの本数の二倍必要になります。

 専用品はやたらと高いのでおすすめしません。代わりに、100円ショップでS字フックと目玉クリップを買ってきましょう。フックにクリップの穴を通せばフィルムクリップの出来上がりです。大きめの目玉クリップなら落下する心配もほとんどありません。

(補足)フィルムを吊るす場所、意外と困ります。私は突っ張り棒を購入して洗面所に設置しました。下に水滴が落ちるのでバットを置いています。浴室ならもうちょっと楽かもしれません。

5. 大きなビーカーまたはボウル

 薬品を水で溶かすための容器です。じゅうぶん大きくて深ければ何でも構いません。欲を言うと、ビーカーや計量カップなどの量を計る目盛が付いているものが便利です。

6. かきまぜ棒

 薬品を水で溶かすときにまぜる棒です。木材は薬品が染み込むので避けてください。あとはなんでもいいですので、調理器具売り場などで適当なものをみつくろってください。

7. 保存容器(ペットボトル)

 使った薬品を次に使うために保存する容器です。専用のものも売っていますが、ペットボトルでも問題ないようです。ただし、透明なので光の当たりにくい薄暗い場所に置いてください。4つあると足りるはずです。

8. ろうと

 保存容器に液体を移すときに必要になります。市販品で大丈夫。

9. はかり

 薬品を水に溶かすとき、きっちり計る必要があります。リットル単位で表記されている場合は、1リットルが1キログラムとして重さを計れば問題ありません。体積を正確に測るのは難しいので、重さで測る方がいいと考えています。

10. ゴム手袋

 薬品を扱うときはゴム手袋をしてください。皮膚が溶けたりします。

11. 温度計

 現像薬品の温度管理に使います。電子式が使いやすくておすすめ。安いガラスの棒温度計は実はかなり誤差がある上に割れやすいのでおすすめしません。

12. フィルムスリーブ

 フィルムを入れる専用スリーブがコクヨなどから出ています。この辺はお好みでチョイスしてください。

*1 厳密にいうと現像液と定着液があればできないことはないが、おすすめしないし一般的ではない。

コメント

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