ニコンの誇る超望遠レンズ「Ai Nikkor ED 600mm F4S (IF) New」

執筆者:はるき

 皆さんは超望遠レンズと聞いてどう感じるでしょうか?僕がカメラを始める前は「難しそう・高そう・何してるの?」こんなイメージでした。遠くの物を撮るもの、そんな曖昧なイメージでした。

 しかしカメラを始め、動体撮影に没頭し初めて知る大砲レンズの異名を持つレンズたち。その当時はプロやごく一部のハイアマチュアのみが使用していたであろう、超高額で超レアかつ特殊用途向けのレンズを現代で使う。プロが使ったかもしれない、当時のプロはこんなレンズでオリンピックを,,,と妄想を繰り広げなから楽しむ、そんな世界観をお届けしたいです。

Ai Nikkor ED 600mm F4S(IF)<New>

 当時生まれてすらいない時代のレンズを触れるだけでも幸せだと思える日々ですが、別格がいます。それがコイツ、通称ロクヨンです。

 カメラに精通している方々は「あぁロクヨンね!」とわかってくださることかと思います。このレンズはNikonがフィルム時代に発売したロクヨンの第三作目になります。85年発売のこのレンズは、重さ5,650gという巨大なレンズになります。また最前面のレンズは顔よりも大きく迫力があります。トランクケースはCT-602、外付けレンズフードはHE-5、ドロップインフィルターは39mm、シリアルナンバーは200001 ~ 202626とのことです。つまりは2625本が生産されたということでしょうか?

 このレンズをNikonD500というAPS-Cカメラに取り付け35mm換算900mmという驚異の世界、是非見てください。

ギミックについて

 CT-602というトランクケースに入っている時点で他のレンズとは一線を画するわけですが、他にも当時最高峰のレンズらしい機能があります。それはピントメモリ機能です。ネジを緩ませてから特定のピント位置でネジを締めることで、その位置を物理的にメモリーしてくれます。具体的には、そのピント位置でクリック感が生じるようになります。またレンズ所有者でも気づかない(執筆の時に気づいた)もので、なんと内蔵フードがついていました。反時計回りにレンズの前の外側を回すことで約10cmほど内蔵フードがせり出します。

作例

Ai Nikkor ED 600mm F4S(IF)<New>, D500

 まずはこちらの作例をご覧ください。85年発売のレンズとは思えない写りをしています。若干のトリミングやRaw現像はしてありますが、このレンズの素性の良さを知るキッカケの一枚でした。旅客航空機の半分以下の大きさでそれよりも機敏に動く戦闘機を捉え、そして鮮明に写すことができる、超望遠レンズの醍醐味の一つではないでしょうか?

 この時代のニコンの大砲レンズはピントリングが非常に軽く作られており素早いスピードでピントを合わせることができます。

Ai Nikkor ED 600mm F4S(IF)<New>, D500

  また超望遠レンズといえば鳥が浮かぶ人もいるでしょう。自分もカワセミ目当てで買ったところもあり止まり物では(鳥が止まっている状態のこと)では非常に満足のいく結果を得ることができました。パープルフリンジが木々の表面に確認できますが、それを差し引いても非常に良い描写と言えると思います。

Ai Nikkor ED 600mm F4S(IF)<New>(@F5.6), D500
Ai Nikkor ED 600mm F4S(IF)<New>(@F8), D500
Ai Nikkor ED 600mm F4S(IF)<New>(@F8), D500

 こちらの一連のコスモスの作例ですが、一枚目の写真はF/5.6で“手持ち撮影”しています。若干の微ブレが認められるかもしれませんが、一段絞りでこの画質と発色は素晴らしいと思います。

 二枚目はもう一段絞り込んで“手持ち”撮影しました。このレンズの特性である二重線ボケが出ていますね。これは野鳥なんかを撮っていると少し背景がざわざわしますが、そこを含めて使いこなすのが撮影者の役目なのでしょう。

 三枚目も“手持ち”で同様の設定で、他の写真とは違い最短撮影距離の6.5mぴったりでピントが来る位置で撮影しました。背景次第でしゃブワァ!と溶けるような超大口径レンズらしいボケが味わえます。モニターを見て感動しました。

※大事なことなので三回言いました

終わりに

 このレンズを買う際に正直この重さのレンズをMFで扱うのは無理なのでは?などと葛藤しましたが、高校生の僕ですらハンドリングできました。それは非常に優れた重量バランスと操作性の良さがあってこそです。

 オールド超望遠レンズ。ニコンに限らず色々なメーカーが生産していました。その非日常的な世界の扉を開ける一歩を後押しできる記事になっていれば幸いです。

※ちなみにこの沼に片足を突っ込むと、大型三脚沼、雲台沼、テレコン沼にハマる可能性があるのでご注意ください

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