大衆機を使おう!~これが私のライカ編~

執筆者:内匠亜

 会社員しながら昆虫の研究をしつつ珍奇植物を集める傍ら、古いカメラを文化財保護とか動態保存とか言って集めてるワタクシ内匠亜(タクミア/タクミャー)はいわゆる”ハイエンド”なカメラを一切所持していないタイプのコレクターである。

 ハイエンドカメラの代表例たるバルナックライカがカメラ界の頂上にあった1950年代、国問わず多くのメーカーがそれに追随したのは有名な話だ。純粋なコピーから創意を凝らした改良機まで多くの機種が作られ、大衆の愛機として受け入れられた。

 一方そうしたカメラたちが「貧乏人のライカ」などと揶揄された(可能性がある)のもまた一つの事実である。

 だが、貧乏人たる私はそういうカメラをこそ愛してやまないのだ。

アカレレについて

 西独にライツとツァイスとフォクトレンダー以外のカメラメーカーが存在したなんて知りもしないだろう方の為に説明しておくと、私のライカはApparate und Kamerabau Gmbh(AkA)にて製造されたAkarelleという機種である。AkAの機体は廉価であり性能が制限される一方、独自の進化を遂げた結果使いやすく仕上がっている。

 シャッターはProntor SVSを採用、最速が1/300とやや心もとないが、低速までバリエーション豊富で使いやすい。レンズシャッター式のため、布幕式レンジファインダー機と違って日光量を気にしたりフロントキャップを忘れて半狂乱になったりせず撮影に臨めるのは大きな利点だ。

大衆ライカとしてのアカレレ

 ライカのライカたる所以は数あれど、最も大きな要素としてあるのはレンズ交換システムとLマウントレンズたちだろう。アカレレでは独自のスピゴットマウントを採用しレンズ交換システムを実現している。単純なスクリューマウントに比して取付がしやすく、また緩みにくいため非常に優れた設計と言える。

 アカレレマウントのレンズには比較的色々なレンズがみられ、特に45~50mmの標準域レンズはメジャーからマイナーまで多様である。「Leitz」と「Zeiss」と「Angenieux」以外のメーカー名以外読んだことの無い方達のために一部紹介すると

・Schneider-Kreuznach Xenar 50mm f:3.5

・Schneider-Kreuznach Xenar 45mm f:2.8

・Schneider-Kreuznach Radionar 50mm f:3.5(筆者はこのレンズを所有)

・ISCO-Göttingen Westar 50mm f:3.5

 このあたりが標準レンズである。これに広角のXenagonや望遠のTele-xenarが加わって豊富な交換レンズ群を形成しており、実質ライカと言えるだろう。

 バルナックライカと言えばその小ささも一つの特徴であったが、本機はサイズ感でもライカに見劣りしない。生憎とプアマンたる私がバルナックライカを所持していないため、RolleiC35との比較写真を載せた。コンパクトさを売りとするローライ35系ボディと比較してこのサイズ感、AkAの努力を感じる。

コンパクトな設計、これは実質ライカと言っても問題ない。

 なおアカレレには連動距離計がないため、どうしても距離を測って撮影した場合は上に示したような単独距離計の使用を推奨する。私の使用しているスエヒロ製の距離計はフィートとメートルの両表記対応であり重宝するが、実はAkA製の純正距離計も存在しており、機会があればそちらを装備したい。

 メーカー純正の距離計をオプションとして備えるあたり、実質ライカと言っても過言ではなかろう。

アカレレ作例

 せっかくなので手頃な価格のレンズと手頃な価格のフィルムで撮影した作例をお出しする。以下の写真は全て3枚玉のRadionar 50mm f:3.5とKodak ColorPlus200にて撮影したものである。

Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200
Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200
Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200

 絞り羽が多いため光点のボケは円を描くようにしてまとまっている。また発色についても、Agfaレンズのようなヴィヴィッドさはないが明色部の際立ち具合が好み。

Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200
Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200

 解放に近い絞りでの作例。設計上周辺光量落ちが強く出ることや背景のボケがやや荒れた風合いになるのは欠点とカウントされるが、クセとして把握していれば現代では強みともなる。

Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200

 ヴィヴィッドさは無いと書いたがそこは3枚玉、条件次第ではここまでの発色を見せてくれる。もう少し絞ればよかったなあと若干の後悔が残る1枚。

Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200
Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200
Akarelle, Radionar 50mm F3.5, Kodak ColorPlus200

 お気に入りの3枚。それなりに絞っても四隅で光量落ちが出たり、ボケ面がややざわざわしたりという欠点こそあるが、それを生かし中央の主題を浮かび上がらせる構図を意識することがコツだろうか。 暖色系の発色が派手になりすぎないため、人工光との相性も良いかもしれない。

アカレレ・フォーエヴァー

 もし私が今後一生ライカを手にしなかったとしてもライカは受け継がれていくだろうし、1930年代製のバルナックライカであろうと今後も羨望の対象となるだろう。

 しかし、もし私がアカレレを手放したら、ややもすれば国内最後の動態保存されたアカレレが失われるかもしれない。大衆機を使うとはそういうことである。高級高性能機を使うのも当然楽しいが、フィルムカメラやオールドレンズへ親しんでいる方には是非旧き大衆機も使ってみてほしい。たぶんこれは、ライカをはじめとした高級機を貴族のカメラと称するとして、それら貴族のカメラを使うよりもよっぽど貴族的な趣味だ。

 何も高級機を使うのが貴族ではない。ちゃんと「使って」「遊ぶ」こそ貴族の嗜みってもんじゃないですかね。違いますかそうですか。

……しかし、アカレレマウントのレンズどこにも売ってないな……。

この沼に住む人
内匠亜

フィルム専門、露出計非搭載原理主義過激派。コンテッサよりイコンタ35でローライ35よりローライC35でペンタックスSPよりペンタックスSL。
1940s~1960sのマイナー機及びその革ケースを愛してやまない趣味人。どっちかというとレンジファインダー派

執筆者:内匠亜
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